はじめに
2026年5月13日から15日までの3日間、ベトナムのホーチミン市において、アジア・大洋州地域のMicrosoft Dynamics 365 Business Centralパートナーを対象とした最大級のカンファレンス 「Directions Asia 2026」 が開催されました。富士フイルムPBCからも数名が参加し、30か国以上から集まった600名近くの参加者とともに、ERPを巡る変化の激流を体感してまいりました。
日本を含むアジア市場についても、Microsoft社からは冒頭で「“Asia is quite special. We think that the potential is awesome.”(アジア市場は特別で、そのポテンシャルは計り知れない)」との言葉があったほか、会期を通じて随所で成長への強い期待を感じました。
本レポートでは、基調講演で示されたDynamics 365 Business Central(以下、Business Central)およびERPシステムの未来像を中心に、特に印象に残ったポイントを抜粋してお届けします。イベントに関するさらに詳しい情報や、個別のご相談をご希望の方は、どうぞお気軽にお問合せください。
基調講演(キーノート):ERPの定義を変えるパラダイムシフト
MicrosoftのMike Morton氏による基調講演は、今回のイベントで最も重要な指針を提示しました。その中心的なテーマは、ERPが従来の「記録のシステム(System of Record)」から「アクションのシステム(System of Action)」へ「進化している」という宣言です。
ERPと人間との役割の変化
ERPの役割が、従来の「業務結果を記録する場所」から、「次のアクションを生む場所」へ変わる。それと同時に、System of Record の時代に人間が担ってきた「システム間、プロセス間を繋げる」という役割はAIエージェントに引き継がれ、人間はエージェントが生成する成果を「指示し、統治(ガバナンス)し、レビューする」という、より高度な階層へ移行していく。このような、大きな方向性が示されました。
戦略的なロードマップ
大きな方向性とともに、具体的な製品のロードマップも提供されています。ただし今回のロードマップ発表では、個別の機能追加の羅列ではなく、「投資テーマ」という大きな枠組みでこれまでの歩みとこれからの展望が示されました。
また、「顧客にAIを提案する前に、まず(当社のような)導入パートナー各社が自社内でAI変革を推進(AI-First)せよ」という強いメッセージも発信されました。これはまったくその通りで、富士フイルムPBCにおいても「言行一致で、まずは自社内から」というスタンスで取り組んでいます。
基調講演デモに見る「AIエージェント」の実力
基調講演のデモンストレーションでは、Business Central が単なる「記録のシステム」から自律的に判断し実行する「アクションのシステム」へ進化したことを示す、3つの具体的なAIエージェントが紹介されました。
① Sales Order Agent : 受注プロセスの変革
このAIエージェントは2025年度始めに提供された機能で、受注業務において「人間が行う、データの橋渡し役(顧客からの見積依頼メールを読み取り、在庫状況を確認し、Business Centralで見積を作成して顧客に送付し、受注を登録する)」の大部分を代替します。
Sales Order Agentが、自然言語による非定型な見積依頼メールを解析・正規化し、システム内の在庫情報と照合して注文書を作成するところまで、自動的に遂行してくれるのです。
営業担当者は、AIエージェントが作成した見積案を受け取り、例外的な条件の確認や最終的なガバナンスとレビューを行うだけです。
② Payable Agent : 買掛金エージェント
このエージェントもSales Order Agent と同様2025年に提供開始した機能で、取引先からの請求と自社の発注・受け取り記録との突合・照合を自動化します。
初期リリース時点では、「メール添付で送られてきた請求書を基に、仕入請求のドラフトを作成する」というシンプルな機能でしたが、今回のデモでは「発注と入荷と請求の3点を照合して請求伝票を作成する」というように、実業務に即した形に進化していました。変化のスピードを目の当たりにして、その速さに驚愕しました・・・。
③ Expense Agent:経費精算エージェント
3つめのエージェントは public preview として公開された新しい機能です。従業員の経費申請から精算、仕分け作成までを、組織のルールに基づいて最適化します。
デモでは、ホテル・タクシー・航空券・レストラン・ベトナム語レシートなどを処理し、現地通貨の推定、支払方法区分、参加者入力、日当計算、承認、会計明細の転記までの流れが示されました。AI OCRに留まらず、ERPの業務統制と結びつく点が重要です。
Expense Agent は、Microsoft社の製品マネージャーが詳細解説する個別セッションも別途用意されており、非常に力を入れている印象を受けました。このエージェントはまだ日本リージョンでは使う事が出来ませんが、当社ではすでに検証を始め、いずれ日本で利用可能になった際にすぐにお客様に活用提案できるよう準備を進めています。日本のお客様にご紹介できるようになるのが楽しみです。
総括と今後の展望:AI変革の渦中で「選ばれるパートナー」であるために
今回のDirections Asia 2026への参加を通じ、Business Centralのエコシステムがかつてない転換点にあるということを強く実感しました。
関心の高さと「活用の壁」
会場にはAIへの高い関心を持つ専門家が集まりましたが、そこで交わされた会話の多くから見えたのは 「AI活用を進めてはいるが、まだ十分ではない」 という実態でした。
最先端の情報を追うパートナーですら自社での活用において試行錯誤している現状は、エンドユーザーであるお客様が、それ以上に「どう活用すべきか」という深い悩みに直面していることを察するに余りあるものでした。
劇的な進化に対し、「立ち止まる」選択肢はない
技術の進化は劇的であり、「クレジットカード一枚あれば個人の開発者が生成AIを活用して週末に小さなアプリを作ってサービス開始できる」ほどに、実装のハードルは下がっています。この変化を前に、「様子を見る」ために立ち止まることは、市場からの退場を意味します。私たちは、その役割を「AIエージェントの管理・統治」へとアップデートし、この激流に乗り遅れないようついていくしかありません。
伴走者としての当社の役割
ERPを取り巻く環境において、もう既に「AIで何ができるか」を語るフェーズは終わり、実務における「AIの実装・統治・成果」が問われるフェーズに突入しています。
現在この渦中にあって、
• 「何から手をつければよいか分からない」と悩んでいる方
• 信頼できる相談相手や、共に変革を推進する支援者を探している方
• 今回のイベントで発表された内容をもっと詳しく知りたい方
は、ぜひ富士フイルムPBCにお声がけください。当社では、Microsoft社とのパートナーシップやグローバルに広がるグループ内会社との連携を通じて、世界最先端の様々な知見を常に吸収し、アップデートし続けています。
それに加えて、自社内での実践経験を活かし、貴社の ERPが「アクションのシステム」へと進化するための最短ルートを確実にご案内してまいります。
本イベント「Directions Asia 2026」の熱気と未来への動向について、当社のグループ会社であり、アジア太平洋地域で企業のデジタル変革を牽引する FUJIFILM MicroChannel のシニア・ソリューション・アーキテクト、Nick Rouse 氏は次のように総括しています。
“Directions ASIA made one thing clear: the ERP industry is no longer debating whether AI belongs in business, it is debating how fast organisations can move. Microsoft is repositioning Business Central from a system of record to a system of action, and the partners who will win are those helping customers understand where they sit on that journey today.”
— Nick Rouse (Senior Solution Architect, D365 Business Central / FUJIFILM MicroChannel)
【日本語訳】
「Directions ASIAが明確にしたことが一つあります。それは、ERP業界における議論がもはや「ビジネスにAIが必要か否か」ではなく、「企業がどれだけ迅速に動けるか」に移っているということです。Microsoft社は、Dynamics 365 Business Centralを単なる「記録のシステム」から「アクションのシステム」へと再定義を進めています。そして、今後選ばれるパートナーとは、お客様がその変革の旅路において、現在どのような立ち位置にいるのかを正しく理解できるよう支援できる存在なのです」
Directions Asia 2026の詳細については、FUJIFILM MicroChannelによる解説記事(英語)もあわせてご覧ください。
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富士フイルムPBC株式会社は、国内トップクラスのDynamics 365導入支援体制を有し、30ヶ国以上・500拠点を超えるグローバルな導入実績があります。豊富な知見と経験を活かし、大企業から中堅・中小企業まで、スピーディなERP導入をご支援いたします。
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