業務効率化や人手不足への対応を目的に、多くの企業が自動化やAI活用を進めています。生成AI、RPA、ローコードツールの普及により、業務効率化の選択肢は大きく広がりました。
一方で、「ツールを導入したのに期待した成果が出ない」「運用が複雑になり、現場の負担が増えた」といった声もあります。背景には、ツールそのものではなく、自動化に取り組む順序や進め方の課題があるケースが少なくありません。
本記事では、自動化プロジェクトを進める前に確認したい4つの視点を紹介します。
自動化プロジェクトが成果につながらない理由
自動化は、業務を効率化するための有効な手段です。しかし、業務そのものに存在する課題をそのまま解決してくれるわけではありません。
たとえば、承認フローが複雑だったり、担当者ごとに運用方法が異なっていたりする業務を、そのまま自動化したとします。その場合、非効率なプロセスや例外対応まで含めてシステム化され、結果として運用が複雑になることがあります。
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の発表によると、AI導入による効果として「業務が効率化した・迅速化した 」と回答した企業は91.6%に上る一方、「売上や利益が向上した」は3.9%、「顧客満足度が向上した」は4.5%にとどまっています*。この結果は、AIを含むデジタル技術の活用が業務効率化にはつながりやすい一方、それだけで売上向上や顧客満足度向上といった企業価値に直結するわけではないことを示しています。
成果につなげるには、業務を見える化し、部門間の接続や例外処理、責任の所在を整理したうえで、標準化すべき範囲と柔軟性を残す部分を設計することが重要です。
1. 現場の業務プロセスを可視化できているか
最初に確認したいのは、自社の業務プロセスをどこまで正確に把握できているかです。
長年続いている業務には、マニュアル化されていない運用や担当者独自の作業が含まれていることがあります。たとえば、次のような状態は注意が必要です。
- 特定の担当者しか理解していない作業がある
- Excelやメールでの手作業が多い
- 同じ情報を複数のシステムに入力している
- 判断基準が担当者によって異なる
こうした状態のまま自動化すると、非効率な運用をそのまま残してしまう可能性があります。
まずは現場へのヒアリングや業務フローの可視化を通じて、実際の運用を整理することが重要です。不要な工程や属人化を解消してから自動化を検討することで、非効率な運用を残すリスクを抑えられます。
2. 自動化の目的と期待効果を整理できているか
すべての業務が自動化に向いているわけではありません。導入コストや運用コストを踏まえ、十分な効果が得られるかを見極める必要があります。
判断する際は、次のような観点が有効です。
- 処理件数が多いか
- 作業内容が定型化されているか
- ミスが発生しやすいか
- 工数削減効果を測定できるか
- 顧客満足度や収益向上につながるか
一般的に、高頻度で繰り返し発生する業務ほど自動化の効果は大きくなります。
また、時間削減だけでなく、品質向上、法令対応、内部統制の強化といった観点も重要です。自動化を目的化せず、実現したい成果を明確にすることが求められます。
3. 業務プロセスは安定しているか
業務プロセスの成熟度も重要な判断材料です。
運用ルールや組織体制が頻繁に変わる業務を自動化すると、そのたびに修正が発生し、期待した効果を得られない場合があります。たとえば、次のような状況では注意が必要です。
- 組織変更や基幹システム刷新を予定している
- 承認フローの見直しが続いている
- 法規制への対応が控えている
こうした環境では、まず業務プロセスを安定させることが優先です。将来的な変化も考慮し、自動化の対象や設計を検討することが重要になります。
ERPやクラウドサービスの導入においても、現行業務と将来像を整理し、標準機能を活かせる範囲と、業務要件に応じて検討すべき範囲を見極めることが重要です。
4. 人が担う業務と自動化する業務を切り分けられているか
自動化は技術だけでなく、人にも影響する取り組みです。現場への説明や合意形成が不足すると、「業務を奪われるのではないか」という不安や抵抗を招くことがあります。
自動化が得意なのは、データ入力や情報収集、定型処理などの反復業務です。一方、人には意思決定や顧客対応、課題解決といった役割が求められます。
そのため、自動化は人を置き換えるものではなく、より付加価値の高い業務に集中するための仕組みとして捉えるべきです。自動化を定着させるには、運用体制の整備や現場の理解促進も重要です。
まとめ:自動化の前に確認したい4つの視点
自動化を成功させるには、導入するツールよりも先に業務の現状を理解することが重要です。特に次の4つの視点は事前に確認しておきたいポイントです。
- 現場の業務プロセスを可視化できているか
- 自動化の目的と期待効果を整理できているか
- 業務プロセスは安定しているか
- 人が担う業務と自動化する業務を切り分けられているか
これらを整理したうえで自動化に取り組むことで、単なる効率化にとどまらず、企業全体の生産性向上や競争力強化につなげることができます。
自動化は、単なるシステム導入ではなく、業務の進め方を見直す取り組みです。ツールの選定に入る前に、業務課題や期待効果、人とシステムの役割分担を整理することが、成果につながる第一歩になります。
業務課題の整理から自動化の定着まで支援
自動化を業務改革の成果につなげるには、現状把握から要件整理、導入後の運用定着までを一貫して進めることが重要です。
当社では、Microsoft Dynamics 365や周辺クラウドサービスの導入支援を通じて、現行業務と将来像の整理を支援しています。Fit to Standardの考え方を踏まえ、標準機能を活かせる範囲と、業務要件に応じて追加で検討すべき範囲を整理しながら、業務改革とシステム活用の両面からご支援します。
「どの業務から自動化に取り組むべきかわからない」「基幹システムの刷新と業務改革を同時に進めたい」「ERP導入を検討しているが、自社に適した進め方を知りたい」といった課題をお持ちの場合は、ぜひご相談ください。
業務課題の整理から将来を見据えたシステム基盤の構築まで、お客様の状況や目的に合わせた活用方法をご提案します。
■Dynamics 365 Finance, Dynamics 365 Supply Chain Management(大企業向けERP)はこちら
■Dynamics 365 Business Central(中小企業向けERP)はこちら
■Dynamics 365関連資料ダウンロードはこちら
■Dynamics 365関連お問い合わせはこちら
出典・注記
・本記事は、FUJIFILM MicroChannel社の “4 Questions to Ask Before Automating Your Business Processes”(著者:Andrew Backway氏、Enterprise Architect - Enterprise Strategy & AI)を参考に、富士フイルムPBCの視点で再構成したものです。
*独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「国内企業のDX動向・AI活用動向のポイント」(2026年7月16日公表)
